メガネっ娘はメガネが本体

小谷ちあきと加藤里保菜が好きです

今年銀行員になる学生が今すぐやるべきたった1つのこと

こんにちは。
元銀行員のねこつーたです。
新卒で入社した銀行を数年で退職し、現在はコンサル会社で働いています。
今回は私の銀行員生活を通じて得た経験を元に、今年の4月に入社する学生が今すぐするべきたった1つのことを伝えていきたいと思います。

メガ・地銀問わず2019年4月に銀行へ入社予定の学生は卒業研究や資格勉強、卒業旅行等で忙しい日々を送っているとは思いますが、
今すぐするべきアクションはたった一つ、

今すぐ別の内定先に連絡して今から受け入れてもらえるか聞く

ことです。
この時期からだと別の就職先を難しいかと思いますし、企業から文句を言われることをあるかと思われますが、ファーストキャリアを銀行で始めるよりも1000倍マシです。

その理由を以下に4個でまとめました。

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1. 人事やリクルーターはあなたのことなんて1ミリも考えていない

銀行の同期の多くが内定承諾を決めた理由として
「担当した人事やリクルータの印象が良かった」
と話しており、銀行の採用力の強さが伺える。
しかし、この理由で入社した多くの同期が早期退職をしている。(恥ずかしながら私もだ。)

ちなみにリクルーターとは「出身大学の学生を採用するために説明会や面談を行う従業員」
いわゆる採用の現場で出会う大学OB・OGと思ってくれればいい。

リクルーターの業務の話や立ち振舞いに憧れて入社した人がなぜ早期に退職してしまうのか? その理由は以下の2点がある。

<採用ノルマ>

銀行の採用活動において、人事やリクルーターには基本的に採用人数のノルマがあり、これらを達成できないと彼らの社内評価に悪影響がある
某銀行ではインターンシップにて自分が担当した学生を入社させた数を人事担当者間で競っているケースもある。
そのため彼らは学生の将来や優秀な人材の獲得よりも自身の処遇を優先して、いかに学生から気に入ってもらえるかを念頭に採用活動を行う傾向にある。
例えば地味な銀行業務を誇張する、仕事を楽しんでいると嘘をつく、銀行の古い文化(年功序列や風通しの悪さ)を意図的に隠すといったものがある。

このように採用現場においては、学生から気に入ってもらうために社内の雰囲気や業務内容に関して実際とは乖離した説明をするケースが散見される。
私も採用活動に参加したが、普段はSNSで鬱々と不満ばかり漏らし、転職活動もしている先輩が盛りに盛った業務内容をとても楽しそうに話しているのを目撃して、悲しい気持ちになった記憶がある。

また、学生に内定辞退をされると担当のリクルーターの責任問題になるため、強い引き止めが入るケースがある。
ここで多くの就活生が「これだけ多くの社会人の先輩たちが私のことを求めてくれているんだ」と勘違いし、情にほだされ内定を承諾してしまうケースもある。
もちろん銀行業務や文化を心の底から楽しんでおり、学生に同じ楽しみを共有させたいといったポジティブな想いで採用活動を行っている良い銀行員もいることは確かであるが、
私が見てきた多くの行員は『ノルマの達成』や『周りも嘘をついているから』と流されて採用活動で嘘をついていた。

要するに採用活動で見る銀行員の姿そして彼らが話す業務は普段とは違っているケースが多い為、 彼らの立ち振舞いや聞いた業務内容を鵜呑みにして入社すると、いざ仕事をした時にギャップが大きすぎてやめてしまうといった悲劇に陥りやすい。

<入っても一緒に仕事できない>

もちろん銀行にも優秀で尊敬できる人がいるのも確かであり、彼らに憧れるのも無理はない。
しかし、彼らと一緒に仕事がしたいと思い入社したとしても、大組織のため同じ部署で仕事ができる確率はとても低い。
むしろ優秀でない上司や先輩の元に配属され、モチベーションが大きく低下する可能性もある。
銀行は大組織であり、一人一人の配属や異動の希望を聞いていては組織が成り立たない。
そのため、たとえ声を上げ続けたとしても希望通りになるには実力とともに上司の発言力やポストの数、運といった自身ではコントロールできないものに左右される。

憧れの人と仕事がしたい気持ちは大変わかるが、それなら憧れの人と初期配属から一緒に仕事ができるような会社に入社することをお勧めする。


2. 入社して数年はまともな仕事ができない

<新入社員の仕事は窓口事務やクレカ販売、飲み会準備>

新人研修の後に始まるのが支店での窓口事務業務である。
銀行によって期間は異なるが、私の場合は約半年間、支店にて一般職やパートの方と一緒に口座開設や変更届の事務処理などを毎日行った。

事務は全てルールが厳密に決まっているため、いかに効率良く行なうかが全てで創造性は皆無であった。
また、クレジットカードの販売を新人間で競うイベントもあり、ATMの前に立って話を聞いてくれそうなおじいちゃんおばあちゃんにリボ払い付のクレカを売りまくった記憶がある。
これに加え、毎月行われる上司の自慢話ばかりの飲み会の予約や席次表(飲み会で座る席を示した図)の作成、芸の準備など業務とは無関係のことも行っていた。
大学同期からベンチャー企業で営業マンとして売上をあげたり、コンサルで事業計画を策定している話を聞いて、悲しくなったのは言うまでもない…。

事務研修後は法人部門や個人部門に移動していくのだが、使う書類や業務プロセスで全く違うため、半年間で学んだ事務や書類の処理方法を活かす機会はほとんどなかった。
(あまりにも役に立たない事務研修期間であったため、あえてスキルを身につけさせないことで転職を防ぐ作戦なのではないかと疑ってしまったほどである。)

<リテールは爺婆に投資信託を売る仕事>

金利で苦しむ銀行において大きな収益源となっているのがリテール業務(個人向け営業)である。
『顧客の人生の良きパートナーになる』
といったキャッチコピーをCMなどでよく目にするが、現場では資産運用の知識のない情報弱者、特に高齢者に取り入って投信や外貨といった金融商品を売りつけるケースが散見される。
(そもそも銀行が販売する投信や外貨はネットバンクに比べて手数料が高いので、ITリテラシーの高い若い層は銀行で資産運用をするメリットがあまり無いので銀行に来ない。)

就職説明会の場でリテール担当の先輩行員が
「顧客一人一人の人生において何が大切かを一緒に考え、それを細かくサポートしていく」
と話していたが、
学生のいない飲み会などでは『人生のサポート』ではなく『いかにノルマを達成するか』ばかり話していた。

<法人営業は顧客の融資事務担当である>

半沢直樹下町ロケットでは中小企業の社長と一緒に事業のあり方を考えサポートしていく法人営業の行員が描かれていた。
同じように「うまくいっていない中小企業経営をサポートしたい」、
もしくは「経営について学んで起業に生かしたい」といった想いから法人営業を志望する学生も少なくない。
しかし、実際に現場に出てみるとそうした問題解決型の業務はあまり無いと感じるはずだ。

むしろ銀行員は顧客の問題解決は行わず、経営がうまくいっている企業からいかに運転資金や為替取引の契約を取ってくるかといったゴリゴリの営業を行っている。
もちろん財務的な観点からアドバイスをすることもあるが、それはあくまで銀行の観点から融資稟議を通すために必要なアドバイスであり、顧客の事業そのものに携わることは少ないと感じた。
(企業の財務判定等はシステムで自動的に行えるようになっており、自身で企業の状態の良し悪しや問題の解決策を考えるといった創造的な活動も少なかった。)

私は銀行員時代に少しでも顧客のためになりたいと思い、経営不振の企業と一緒にどうやったら事業を拡大できるか考えたことがある。
しかし、上司から事業がうまくいかなかった際に訴訟問題になりかねないので「簡単な相談にも乗ってはいけない」との指摘を受け、あえなく断念した経験がある。
もちろん問題解決の機会が全くないとは言えないが、問題解決や経営に近い仕事がしたければコンサルやベンチャー企業に行った方がいいと思う。
銀行の法人担当者は企業の運転資金や為替取引の事務をサポートする存在であると思った方がいいかもしれない。

(紙や印鑑至上主義、顧客へのメールでは業務について書けないのでFAXや電話をする、紙ベースの研修課題を手書きで作成する、不要な会議や勉強会が多いといった問題点もたくさんあるが、書ききれないのでここでは割愛する。)


3. 本部へ行っても状況は変わらない

<そもそも希望の部署へ行ける人が少ない>

本部へ行って大規模なファイナンスに携わりたいという学生も多いと思うが、大量採用かつ学閥重視のため、まずそういった部署に行ける人が少ない。 同期で「海外関連の部署に行きたい」という思いのもと、3年間の支店事務や営業に耐えたが、最終的に外国為替の事務処理を行う部署に送られたケースもある。(一応海外関連の部署ではある…)
また、希望の部署へ異動したとしてもその部署が人員過多であり、トレーニング扱いとして数年間先輩のサポートをするといったケースも散見される。

<本質的でない業務が多い>

私は銀行に入るまでメールのToとCcの使い分けや宛先の順番をを意識したことがなかったが、銀行ではこの細かい作業がとても重要であった。
社内メールを送る際に役職や部署のパワーバランス、はたまた入社年次や階級等を考慮してToやCcの振り分けや順番を決めるといった作業を行う必要があり、
少しでも間違っていると上司や先輩などから指摘が入った。
会議や飲み会の席順においても同様の作業をする必要があり、同期は大きな会議のために数時間かけて席順と召集メールを作成したこともあったようだ。
数年間の事務や営業を耐えてやっとたどり着いた本部にて想像していた業務と現実のギャップに苦しむ人も少なくない。


4. 転職しづらい

銀行に入社する際に、

『法人営業を通じて経営を理解する』→『ベンチャー起業の企画部門』
ファイナンスを理解する』    →『外資投資銀行

といった理想のキャリアを思い描いて銀行に入社する人も多い。
しかし、③で書いたように銀行の法人営業ではベンチャー起業で生かせるような経営について学ぶ機会や、外銀で生かせるような投資銀行業務を行う部署に配属される機会は少ない。

また、このような機会の量以外にも銀行員が転職しづらい原因が以下の2つである。

<ポータブルスキルが身につかない>

銀行員は銀行内でしか使わない以下のようなスキルの研鑽を強いられるため、他の業界や職種への転職がしづらい。

例)
* 事務処理や顧客情報登録、融資稟議書作成のためのシステムの使い方
* 事務処理のフローや紙ベースでの書類の書き方
* 稟議書等のための使用する銀行特有の言葉遣い

銀行では独自のシステムや業務フローを使っているため、上記したような事務作業や言葉遣いを他社で活用することはほとんど無い。
また、書類もほぼ全て規定のものがあるため、エクセルやパワポを使って顧客むけ資料を作る機会がほとんど無い。

<本質的な思考力が身につかない>

『銀行で上司の意見に対して異議を唱えることは、某国で将軍様に逆らうようなものである』

とはよく言ったもので、銀行にて自分の考えを自由に発言できる文化はほとんどない。 たとえ上司が間違っていたとしても、いざ意見を言おうものなら『反抗的であり指示に従わない』といった悪評価をつけられる恐れもある。
(部署の風土や上司の性格によっては自由に発言できる場合もあるが少数である) そのため自分の頭で考えず、上司の指示にただ従って業務をこなすような姿勢の先輩や同僚を数多く見てきた。

環境というのは怖いもので、最初は意見を言っていても受け入れてもらえないため徐々に諦めの気持ちが湧き、いつの間にか自分の頭で考え発信することを放棄してしまうのである。これで“立派な社会人”の完成である。
また、事務や営業では業務フローが詳細に決まっているので、自分で仮説を立ててアプローチを組み立てるといった創造的な業務も少ない。
(いざ事務処理専門の部署に行こうものなら、ひたすらマニュアルを見ながら処理を繰り返す毎日である。)

30代になって銀行が嫌になりコンサルに転職してくる人も多いが、これまで上司の指示や業務フローに頼り切って仕事をしていたため、
「自分で問題設定をし、アプローチを自分で考える」といった本質的なスキルが身についておらず、ついていけないといったケースも少なくない。



最後に

これまでいろいろと銀行に入社すべきではない理由を書いてきたが、どこ就職するかは本人の自由であり、一概に止められるものではない。
しかし、私のように安易に銀行の人事や先輩の話を鵜呑みにして内定を承諾し、いざ入社してから騙されたことに気づくといった悲劇がもう二度と起きて欲しくない。 誤った情報で進路を決めてしまうと、いざ方向転換する際に多大な労力と時間を要してしまう。 そのため、進路を決定する際はたくさんの情報を集めるとともに、その情報の精度も確かめながら選んで欲しいものだ。